ぼくのヒーローR2 第4話 いつわりのこんやくしゃ


今日は一日可愛いルルーシュとイチャイチャする予定だったが、本人がいないためそれは諦め、久しぶりに学園に来てみた。すると、あちこちでヒソヒソと噂話をしている姿が目に入り、彼らの視線はなぜかこちらを向いていた。噂の内容はおそらく自分に関することだとすぐに気がついたが、一体なんだろう?
通学中、廊下でも、教室でも、男女問わずにこちらの様子を伺いながら話している。
寝癖が酷いとか、顔に何かついているんだろうかと思いトイレに駆け込み鏡を見たが、いつも通りの癖っ毛ではあるが、おかしな所はなかった。
もしかしたらユフィの騎士になったから?と思ったが、男女共に非難がましい視線を向けて来ていて、何か違う気がした。
特に男性陣からは、殺気の籠った視線を向けられている。
この前来た時に何かしたのだろうか。
それとも、イレブンが皇女殿下の騎士になったからだろうか。
わからない。
全然わからない。
居心地の悪さを感じながら教室で教科書を眺めていると、登校してきたリヴァルがこちらに気づき駆け寄ってきた。

「おう、おはようスザク!見たぜ叙任式!すごかったな!お前本当にユーフェミア様の騎士になったんだな、友人として鼻が高いぜ!」

友人が皇族の騎士になった事が嬉しいと、手放しで称賛し嬉しげに笑った。

「ありがとうリヴァル。僕もまだ信じられないんだ」

自分が選ばれた事もだが、上位の皇族の部下である僕が、その後大きな争いもなく彼女の騎士になれたことが。スザクがシュナイゼルの部下とはいえ末端の者だったから、妹と争うよりもスザクを差し出すほうがいいだろうとシュナイゼルは判断したらしい。リ家とエル家、家の力でもエル家の方が上だが、もしここで事を大きくすればユーフェミアだけではなくコーネリアも敵に回すことになる。侵略戦争を行っているブリタニアの宰相としては、戦女神とも呼ばれるコーネリアを敵に回すような愚を犯すなどありえない。コーネリアが戦場に立つだけで、予定よりはるかに早く国は落ちる。つまり、軍事費にせよ兵の損失にせよ、彼女が戦場に立つだけで最小限ですませる事が出来るのだ。
これほど有力な駒を宰相が手放すはずがない。
その結果、スザクは第二皇子の部下でありながら第三皇女の騎士というあり得ない人事がスムーズに行われたのだ。

「でもいいのかよ、学校にきてさ」
「うん、ユーフェミア様が、学校へ行きなさいって言ってくれたから」
「おお、流石慈愛の姫。・・いや、これは自分の騎士が馬鹿だったら困ると言う事なのか?」

にやりと、ふざけた口調で言うリヴァルに「ルルーシュにも言われたよ」とかえすと、途端にリヴァルは眉尻を下げた。

「ルルーシュと話したのか?まだ戻れないって?」
「うん、なかなか手ごわい相手みたいだね」

幼児化の話は出来ないため、ルルーシュはチェスに負け、その相手を負かすまで帰れないとごねている設定で、そのためにも大好きなナナリー断ちまでしている・・・という事になっている為、誰も連絡を取る事が出来ないのだ。
スザクと、ルルーシュの知り合いだという女性を除いて。

「あのルルーシュが勝てないなんて、信じられない話だよな」

今まで負けた姿など見た事のないリヴァルは、大袈裟に息をついた。

「そうだね。それよりリヴァル、聞きたい事があるんだけど」

この話題は拙いと、ぼろを出す前にスザクは話題を変えることにした。

「僕の騎士の話以外でなにかあった?」
「ん?何かって?」
「気のせいかもしれないけど、周りの目が凄く冷たくて・・・」

元々、イレブンであるスザクに向けられていた視線は冷たい。無視をする者も多い。だが、生徒会に入ってからは幾分か周りの空気も和らいでいたのに、今はあのとき以上に冷たい視線を向けられている。皇族の騎士になった事は原因ではないと思う。となると、他の原因が思いつかないのだ。

「あ、あ~、あれか。あれなぁ・・・え~と、あれはだな」

質問の意味が解ったのか、リヴァルは途端に口ごもり、困ったようなひきつった笑みを浮かべた。間違いなくリヴァルはこの状況の理由を知っているのだ。

「何?何があったの?僕、何かしたのかな?」
「何かしたと言うか、ナニをしたというか・・・」

視線をそらしながら言われた言葉の意味が解らないが、何かをしたと言う事だけは解った。さらに問いただそうとした時、教室内に入ってきた女子生徒がスザクの顔を見るなり駆けよってきた。
茶色の長い髪をなびかせてやってきたのはシャーリー。
眉を寄せ、明らかに怒っていて、普段と違う様子に思わず身構えた。

「スザク君、説明して!!」

開口一番、シャーリーはスザクの机を勢い良く叩きながら言った。

「え!?な、何を説明すればいいのかな?」
「何って、決まってるじゃない!カレンの事よ!」
「カレン!?」

予想外の名前に、スザクは目を丸くした。

「とぼけないで!私はスザク君がカレンと結婚するのは素直に嬉しいし、祝福するよ。だけど、カレンがいるのに、どうしてユーフェミア様の騎士になったの!?」
「・・・は?」

言っている意味が解らず、スザクは間の抜けた声をあげた。それが気に入らなかったのだろう、シャーリーはますます眉間にしわを寄せて目を吊り上げた。

「だから!カレンの事、どうするつもりなの!?」

鬼気迫る勢いのシャーリーに結論を迫られたが、そもそも何の話をしているかさっぱり分からなかった。

カレンと結婚。
・・・カレンと?
カレンって、あのカレン?
僕がカレンと?
駄目だ、やっぱりわからない。
スザクは困惑した顔で睨みつけてくるシャーリーと、困りながらも興味津々なリヴァルをみつめた。

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